主宰近詠 茶摘・田植

admin 8月 8th, 2008

雑誌『夏潮』2008年8月号より

今朝摘みし茶の畝といふ匂ひけり
五分刈りのやうに茶畝を摘み了へし
今朝摘みし宇根は色濃き茶山かな
筒鳥や茶畑丘を乗つ越して
男湯に放り込まれて菖蒲束
菖蒲湯の夜を母許にすごすかな
麻雀の音どこからか蛙宿
ぴりぴりと剥がして烏賊の墨袋
歯ぎしりのやうにも啼いて夏燕
つぎつぎと薔薇を揺らして同じ風

主宰近詠 夏近し

admin 7月 7th, 2008

雑誌『夏潮』2008年5月号より

干潟消え失せて一島残りけり
朝寝して港の音のちかきこと
晩年のはじまつてゐる朝寝かな
灯を消して桜を闇にかへしけり
一ト筋の落花光琳水にかな
雨にやゝ色ほとびたり紫荊
紀の国はつまり木の国杉の花
ラパン・アジル出れば静かな春の夜
春の夜の女の声の品下る
爪はぢきすれば烟りて松の花

主宰近詠 碧梧桐忌

admin 5月 3rd, 2008

雑誌『夏潮』2008年5月号より

岩鼻をまはればここも若芽干す
傍らに湯を焚くけむり若芽干す
春寒の七瀬祓いの小浜かな
梅の庭ヨット引き込みありにけり
踏み跡の乗り越えてある雪崩かな
剔られて黄土色ある雪崩かな
宿消えて海苔●(ひび)消えて浜はあり
浅春や弑(しい)されたまふ首級(しるし)塚(づか)
犬は犬を人は人見て春の草
絵馬懸けの懸け重りして春の宮

主宰近詠 お書初

admin 4月 20th, 2008

雑誌『夏潮』2008年4月号より

二日はやサーファー浪を待ちて浮く
墨の香も炭の匂ひもお書初
打ち込める第一画や筆始
朔風に武蔵総社は北面す
黒ぐろと洞を嵌めたる大冬木
臘梅のすべ/\とほころびにけり
万両のひねもす日陰紅ふかし
塀外を探梅といふ歩きぶり
楼門に祀る韋駄天寒の晴
雪女かならずに背のたかきこと

主宰近詠 偲ぶよすがの

admin 3月 4th, 2008

雑誌『夏潮』2008年3月号より

業平を偲ぶよすがの落葉塚
降り立ちて鷺の真白や池普請
泥濘を橋渡りをり池普請
池普請とりちらかして昼休み
冬の雨レバノン杉を濾して降る
スイミング出て短日の人通り
本堂の背ナいかめしき年の市
飯山線雁木の町をたどりゆく
袖ほどを散り残したり大銀杏
鰰の山を鰰滑りけり

主宰近詠 火宅にありて

admin 2月 5th, 2008

雑誌『夏潮』2008年2月号より

乗り合はせ信濃の人も月見船
女郎蜘蛛女座長の威風もて
威し啼き宥め啼きして枝の鵙
木槿咲き咲く春日原(カスガバル)白木原(シラギバル)
つと逃げてつつと止まりて鯊小さし
木犀は枝を飾りて咲けるかな
惜しみなくとは木犀のこの香り
たどり来て湯ヶ野湯ヶ島石たたき
障子洗ふ漢あねさんかぶりかな
野茨の実だくさんなる律儀かな

主宰近詠 はりらほりら

admin 1月 9th, 2008

雑誌『夏潮』2008年1月号より

青柿のこれは渋きと管理人
新松子あかるき色に凝れるかな
風鈴も元気をとりもどす時刻
半鐘のやうに風鈴たゆむなく
隔てゐる河面は見えず丘茂る
川戦サありけむ葭にもひそみけむ
いまの名は中山広場朝の虫
旧邸を棲み汚しをり忍冬
木ささげの閑かに垂れて四庫全書
過ぎし町もろこし畑にはや没す

主宰近詠 真潮逆潮

admin 12月 3rd, 2007

雑誌『夏潮』2007年12月号より

筒鳥や太古は湖底たりし原
馴染みうすき京成電車花菖蒲
菖蒲田に傘混みあつてきたりけり
雨止めばすぐ蒸してきし花菖蒲
菖蒲田の十畳ほどの花盛り
花菖蒲風を厭ふて揺れかはす
父を恋ふ心にゆるる白菖蒲
木下闇にも雨粒のいたりそむ
グラジオラス咲いて過疎とはにべもなし
ひつそりと夜の厩舎や誘蛾灯

主宰近詠 石積んで

admin 11月 5th, 2007

雑誌『夏潮』2007年11月号より

池の面を座とさだめたる落花かな
聖堂のドア覗きては新入生
牡丹全開天日をいだき寄せ
一弁の蕩(とろ)けゆがめる牡丹かな
照らさるる桜は夜も散り止まず
てらてらと辺りを映し甘茶仏
天下指すおよびを垂るる甘茶かな
注ぎ参らせば瞬き甘茶仏
石積んで積んで山葵を生業に
頬撫でるほどの風あり蜃気楼

主宰近詠 遇つたことなき祖父

admin 10月 5th, 2007

雑誌『夏潮』2007年10月号より

早梅や遇つたことなき祖父の墓
薄氷に触れて引つ込む靴の尖
発電所遠く灯り獺祭る
獺はしたたりながら祭りけむ
紅梅や忙しがりて来ぬ娘
霧笛舎の影水仙に及ぶかな
春風が夕風となり智恵子の碑
ながれこみ来たる朝日に浜千鳥
濡れ砂に千鳥の胸の映るかな
その中に千鳥といふは幼な顔