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11月8日 杞陽忌(籐椅子句会)
「籐椅子句会の例会を豊岡でしましょう」と、本井英先生がおっしゃったといううれしい知らせが入って来た。
その時桂子様が「籐椅子のみなさまはベテラン揃いよ」とおっしゃった。
この小さな町で小さな木兎会でおもてなしのすべも分からず、ただ不安と戸惑いがつのるばかり……。
そんな中、また知らせがとび込んできた。
「円虹」の山田弘子先生が、「俳句研究」に「杞陽評伝」を連載なさっていることから、
杞陽忌にお参りくださることになり、これもみな杞陽先生のお導きであろうと感謝しつつこの日を迎えた。
杞陽忌前日、籐椅子句会のマイクロバスが京都から到着、城崎での吟行に豊岡組も合流させていただく。
豊岡から城崎までの円山川沿いを走ると、水量豊かにゆったりと流れる川面に早や冬鳥が来ていた。
緊張もほぐれ、にぎやかに案内の会話がはずむ。
土曜日の湯町は賑やかで、志賀直哉で有名な三木屋のあたりから、裏通りの木屋町を歩く。
川底にはりついている桜落葉が美しい。
浴衣姿の客とすれ違いながら、杞陽句碑のある本住寺を訪う。
静かな境内に自然石の句碑が据っており、私達を待っていたかのように綿虫がとんで来てはどこかへ消えて行った。
夕焼に染まる川沿いを豊岡へ帰り、六時半より前夜句会、
夕食をとりながら本井先生のお話や句評になごやかな時をすごし、十時前閉会した。
桂子様がおっしゃった通りベテランの力量を充分に知らされた一夜だった。
前夜句会入選句一人一句
河面ラのとろりとひろし夕紅葉 英
ゆとう屋の洋館にある障子の間 芳子
初冬の丹波の山家深庇 静江
かいつぶり円山河畔夕ぐれ来 伊紀子
綿虫のとぶ駅前の外湯かな 美津子
紅葉山裾に満車の駐車場 春子
柳散る湯町に多し文学碑 好子
色変へぬ松の下にぞ杞陽句碑 稜子
柳散る川に向ひて時計店 和子
廃川の脇のバス停冬来る 美穂
杞陽忌にいつも綿虫舞ふといふ やよひ
猪垣の端は崩れて櫓田に 伴枝
湯の町の美男かづらの散歩みち 敬子
城下町二つ過ぎけり旅小春 桂子
立冬の日は暮れにけり旅に在り ミチ
曼陀羅湯外湯の一つ青木の実 光弘
湯の町の桜紅葉の裏通り 房子
二羽三羽来れば我が家も鵯の宿 英子
十一月八日、杞陽忌。朝八時、籐椅子会の皆様はご廟へお参りになり、
こうのとりの郷公園や、虚子句碑、杞陽句碑、亀城館周辺を散策。
本井先生、山田先生、京極先生も会場にお揃いくださっていて午後一時、三十七名の杞陽忌俳句会を始めた。
祭壇には先生のお写真と六つの花のお軸を掛け、古い『木兎』やご遺稿も披露し、
ありし日の先生のお声も少しお聞きいただいた。
窓の冬日が会場深くまでさし込む中、句会は予定通り進み、先生方のご丁寧な句評をいただき、
四時前無事に杞陽忌を終えることが出来た。
この度は、杞陽先生をご存知なかったかも知れない籐椅子会の皆様とご縁をいただき、
杞陽先生のご足跡に触れていただけたことが何よりありがたく思われた。
瀧田琴江様が残してくださった杞陽先生の膨大な資料を、これからも大切に守ってゆきたいと思っている。
皆様本当にありがとうございました。
杞陽忌 入選句一人一句
おろがめば木の実零して応へらる 英
笹鳴やみそなわせとぞ額づけば 弘子
ときじくのこのみのやしろ杞陽の忌 高晴
沼たりし廃川淀む杞陽の忌 昇
豊岡へ罷り越す忌よ冬立てば 和夫
御墓所への五十二段や冬めいて 美穂
小春日の木の香の駅舎杞陽の忌 和歌子
ゐのこづち膝の上までつけ来たる 芳子
師の小春日和の御声流しもし 春子
先生と呼びかく墓前冬そうび 睦子
孫弟子と小さく彫られ身に入みぬ 伴枝
お逮夜を渡りし月の朝霧に 桂子
羊蹄草に極まりけりな草紅葉 ミチ
きのふよりけふの小春に忌を修す 光弘
木の実踏みまた木の実踏み詣でけり 房子
杞陽忌の燭に白山菊揺れて 喜美子
露けしや亀城館より山に入る 和子
閂は抜かれずありぬ冬紅葉 好子
鉄橋をくぐり花蓼過ぎて廟 箭作
杞陽忌の竹の静けき御廟かな 勲
廃川の流れゆるやか枯葎 やよひ
御遺影に山竜胆の白き壷 幸子
結界は猪垣囲ひご廟径 時江
猪垣のかく増えたりな御廟道 美津子
城山の紅葉を窓に忌を修す 美佐枝
豆を煮る豆の甘さも冬に入る 和子
冬の灯を奉りたる静心 英子
(英子)